マレーシアに行ったとき、ゴディバを二回も食べたのですが、そのときはタイにはゴディバがないと思っていたのです。で、帰ってきたら、いたるところにゴディバありまして。極めつけには、いつも行ってるデパートの、何十回と通ったエスカレーターの前にどかんと立ってました。
これはつまり、日常のなかで、われわれはなにも見ていないということです。毎日の何気ない風景を新鮮な目で見て生きていくのは、子どもでもない限り難しい。だから我々は、高いお金を払って飛行機のチケットを買って、旅に出るのです。遠くの街に、「ふだん見られないものを見に行く」のではなくて、「ふだん見落としているものを見に行く」のですね。