歯が痛かった。歯が痛いと、ずっと歯について考えることになる。あたまのなかに痛い歯のレントゲン写真を思い浮かべて、ここがこうなっていて痛いのだろうとか、ここをこう磨けばよかったのだとか、ここを切ってこう治療するんだろうとか、素人なりに考えてみたりする。なんだかその時点で、意識のなかの奥歯は、小粒みかんくらいの大きさに膨らんでいる。
とりあえず緊急の治療が終わって、痛みが去って鏡を見て、驚いた。奥歯って、すごく小さい。小指の先ほどの大きさである。あんな小さな部位が、ホモ・サピエンスの巨大な脳を「歯が痛い」でいっぱいにできるのだから、すごい。
今日の短歌は、そういう短歌です。満月も虫歯も、見つめていると実物以上に大きく見えてくる。