記憶のなかにあるはずの「教室」を思い出そうとしても、机と黒板くらいしか頭に浮かばず、ディテールがぜんぜん思い出せない。その「思い出せない」ということが、何を意味するのかもよくわからない。いじめなどの嫌な記憶を抑圧しているから思い出せないのだ、ということもない。学生時代、つねに心ここに在らずの空想少年だった、ということもない。そもそも不登校で教室に行かなかったのだ、ということも、もちろんない。
同じ年齢の人間たちに、四方を何重にも囲まれて、狭い部屋のなかで座っていた、というのは、すこし変な感じはする。が、別にそのことにいまさら文句もない。学生のみなさんには、頑張って勉強してほしいと思う。