飛んで火に入る夏の虫は、はたから見たらただのアホかもしれないけれど、「家のなかに、まだ赤ちゃんがいるの!」という母親の叫び声を聞いて、いてもたってもいられず飛び込んだ可能性もある。
虫との思い出を振り返ってみる。小学五年生のころ、自分の部屋でカブトムシを飼っていた。可愛がっていたかと言われると、覚えていない。カブトムシは、ただ、そこにいた。もちろん、あちらから「泊めてください」と言ってくるはずはないのだから、ぼくが親にねだったか、外で拾ってきたのだと思う。エサくらいはあげていたと思うけど、いつの間にか死んでいた。ベランダの植木鉢に埋めたとき、カブトムシのからだがとても軽かったことだけ、妙に覚えている。